タングルウッド音楽祭
大学卒業後の夏、私はアメリカでタングルウッド音楽祭に参加する機会を得た。
この音楽祭は、数ある音楽祭のなかでも大規模なもので、二ヶ月以上にわたって続く。
世界中から若い音楽家がオーディションによって選ばれ、奨学生になり、連日オーケストラと室内楽の練習に明け暮れる。
合間には一流の講師陣によるレッスン、週末にはコンサート出演、と参加者は息をつく間もない。
有名なアーティストも数多くやってくる。
私の参加した年には、バーンスタイン、小澤征爾、ヨー・ヨー・マ、パールマン。
ざっと挙げただけでも超一流の顔触れで、彼らを目当てに全米中から聴衆が集まってくるのだ。
アメリカの印象は、とにかく広い、大きいということであろうか。行けども、行けども続く道、巨大なスーパーマーケット、ステーキも、ピザも巨大。
そしてアメリカ人はとにかくフレンドリーで、誰にでもハイ!!と笑顔で挨拶する。あまりにも常に笑顔で気さくなので、実際のところ何を考えているのか、分からない人もいた。
先生と生徒の間もかなり日本とは雰囲気が違う。生徒が、先生に向かってハ~イ!!と呼びかけるのを見て、日本の大学を卒業したばかりの私は、たまげてしまった。
しかしそこは競争社会のアメリカのこと。
例えば、演奏会後の打ち上げパーティなどには、プロデューサーや音楽業界の力ある人達が集まる。学生たちは皆、彼らにあいさつし、如才なく笑顔を浮かべ、自己アピールに余念がない。
日本ではコンクールに入賞したりすると、本人がぼんやりしていても周りが勝手に持ち上げてくれるが、そんなことはここでは通用しないんだ、と実感させられた。
そして、アメリカの学生は、とにかく初見がよくできる。
変拍子も現代曲も頓着なく、初めて見た楽譜をどんどん弾いていく。かなりトレーニングするらしいが、初見で弾けて当たり前、という雰囲気が一番の要因である。
チャンスはいつ、どこで転がっているかわからない。その機会をとたえるためには、常に準備万端に整えておく。
アメリカ社会のシビアな一面を見た気がした。
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